クラウゼヴィッツやトゥキュディデスの本などを読みながら国際ニュースを読み解きます。

金融・経済の最近のブログ記事

「2年以上に及ぶ深刻な景気収縮の後だというのに、公定歩合すなわち連邦準備銀行から市中銀行に貸し出す際の金利を引き上げたのである・・・通貨供給量の減少は、必ず深刻な不況を生み出している。」(『資本主義と自由』、ミルトン・フリードマン)

 

今回は、

米英と欧州の金融セクターにリスク、アジアは力強い=豪中銀高官 (ロイター、2010/2/16)

「過剰な」差し押さえ、今年の米住宅価格の下落要因に-S&P   (ブルーム・バーグ、2010/2/16)

の記事に注目しました。

 

公定歩合の重要性は、1930年代のころより確実に低下しているものの、記事にあるように

  • 商業用不動産向け融資の多い中小金融機関の経営悪化
  1. →中小企業向けの与信減少→国民の心理悪化
  2. →差し押さえの増加→住宅価格の下落→不良債権の増加

というリスクについて注目していこうと思います。

 

上記のミルトン・フリードマンの文章の前は、イギリスの金本位制離脱が原因で金流出を防ぐために公定歩合が引き上げられたという流れになっています。つまり、国家の衰退・興隆と大恐慌が発生した要因とが密接に結びついているわけです。

 

現在、米中の関係が微妙になってきています。また、日本の政府債務残高が非常に悪化してきていることが米国債の消化に影響を与えるというような形で状況が悪い方向にいく可能性もあるでしょう。

 

上記のような見方でニュースを見ていくのも有益かもしれませんね。

libor.jpg

1990年代初頭より長らく米国の方が高かったLIBOR(London inter-Bank Offered Rate)が大きな節目を迎えています。


LIBORは、ロンドン銀行間出し手金利と訳され、資金の出し手が借り手に提示するものです。一般的にLIBORの市場参加者数は非常に多く、歴史も古いため短期資金の調達コストの指標として国際的に信用されています。


まずは2009年8月24日に3か月物、9月7日に4カ月物、10月29日に5か月物が逆転し6か月物も時間の問題かと考えられていました。


では11月後半の流れを見てみましょう。


11月16日、バーナンキFRB議長は、米経済は「なお重大な試練に直面している」と発言し、低金利の長期化を示唆。


11月17日、6か月物の日米逆転。


11月19日、経済協力開発機構(OECD)のグリア事務総長が「日銀は強い姿勢でデフレと戦うべきだ」と発言。


11月20日、政府のデフレ宣言。


12月1日、日銀追加緩和策発表。(グラフ青のライン、つまり日本3か月物の金利が急に下落しているのが観察できます。)


6か月物の金利は、グラフでは緑(米国)、紫(日本)で表示されています。グラフでは11月16日の軸付近で逆転が起こりました。米国は、金融危機後の膨大な資金供給を受け、金利が非常に低くなっています。危機後の対策として銀行間の金利を低くすることがFRBの目標となっていたところから、現在のLIBORの流れは続くのではないかと考えられます。


USDJPY.gif

次にチャートを見ていきましょう。6か月物のLIBORで日米が逆転した11月17日周辺から急激に円高が進み、12月1日の日銀の追加緩和策発表周辺からドルが買い戻されている様子がうかがえます。


本日、バーナンキFRB議長が講演会を開くことから、大幅に改善した雇用統計を受け、出口戦略を予想より早く模索し利上げも予想より早いのではないかという見方が急速に広まりました。


しかし、消費者物価、卸売物価は前月比ではプラスになりつつあるものの、前年比ではまだマイナスが続いており、もうしばらく金融緩和を続けるのではないかと考えられます。


世界恐慌の発生を防ぐという観点から、ドルを大量に市場に供給してきた議長は、引き締めるべきときとそうではないときの判断を慎重に行うのではないかと予測され、ここから考えれば、今は引き締めを行い市場の熱を再び冷ますようなことはないのではないかというのが、私の予測です。


最後に、次の式を見ておきましょう。


実質金利=名目金利-期待インフレ率


現在日米ともにデフレ傾向にあり、名目金利よりも実質金利の方が高くなっています。つまり、期待インフレ率を引き上げ、実質金利をより低く引き下げられるほうが、景気対策上好ましいという状況です。


ここからも、しばらく金融緩和が続き、マネーの供給を急激には絞らないだろうという予測のほうが理にかなっているのではないかと考えています。


11月20日、政府は11月・月例経済報告にて「デフレ」の文言を再び使用し、「物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある。」とデフレ宣言を行いました。


現在の日本は、消費者物価はまだ7か月連続の下落に留まっているものの、名目成長率と実質成長率の逆転が2四半期連続で発生していること、4~6月期の需給ギャップが40兆円もの大幅な供給超過に陥っていることなどが今回のデフレ宣言につながったと考えられています。しかし、国際通貨基金(IMF)の定義によれば、デフレとは消費者物価を念頭に「2年程度下落が続く状態」と考えられているため、日銀は政府のデフレ宣言を早急だと受け止め懐疑的に受け取っています。


日銀は、消費者物価については年明けまで様子を見た方がいいというスタンスであり、雇用に関しては指標を見る限り上向きという流れとなっています。また、内閣府「今週の指標」では、2009年7-9月期の需給ギャップは-6.7%、2009年4-6月期は-7.5%だったため改善したという判断が示されています。


この中、ユニクロ、ニトリなど価格競争にて優位を保っている企業が批判にさらされ、各シンクタンクの分析では需給ギャップの解消方法を主に政府の支出に期待する向きが強まっています。


私は、経済の状況が厳しいにしても、今回のデフレ宣言は早すぎたのではないかと思います。デフレの判断には政治的なことがらをなるべく排除して判断する必要があるにもかかわらず、今回は経済対策を打つ必要性から盛り込まれた要素も非常に強いと考えられるからです。


そもそも20日のデフレ宣言は、日銀の政策金利が発表される20日前日の経済協力開発機構(OECD)のグリア事務総長の「日銀は強い姿勢でデフレと戦うべきだ」という発言と呼応しているように見えます。そこでは、超低金利政策の継続と日銀に対する国債買い取りの増額が提案されていました。経済対策を打つ必要性を後押しする提案だったため急遽、デフレ宣言が発せられた可能性も考慮するべきでしょう。


政府と日銀の応酬を注意深く見守ると同時に、経済の基本的な環境を掴む努力(人口減少)、長期的に持続可能な経済(国債増発に対する懸念)、台頭著しい新興国の為替(特に中国・人民元)の問題等をより明示的に話し合えるようにすることが必要だと感じています。


研究所

レポートの副題

第一生命経済研究所 輸出主導の景気回復が続く。10年度後半は踊り場へ~
日本総合研究所 政策効果一巡などを背景に、2010年前半はマイナス成長に ~
農林中金総合研究所 デフレ下、緩やかな景気回復が継続ただし、2010 年前半にも一時的に足踏みする可能性大
みずほ総合研究所 個人消費を巡るファンダメンタルズの改善も期待薄、企業の保守的な投資行動は当面持続、デフレ持続、外需は増加基調、景気は政策の出方次第(レポートの日本経済の部分)
明治安田生命 日本経済は一旦停滞感を強める、2010年度は上向くが力強さはない
ニッセイ基礎研究所 緩やかな回復では戻らない経済活動の水準
野村證券金融経済研究所 日本経済:本格回復に向けた調整期間へ
三菱総合研究所 日本経済は緩やかに回復
三菱UFJリサーチ&コンサルティング 反動減の大きさが懸念されるが二番底は回避へ

今回は、各シンクタンクの「踊り場」の時期と、それより悪化した状態の「二番底」についての分析をご紹介します。


(1)「踊り場」についての分析


多くのシンクタンクは、2010年度に一度景気の調整局面(「踊り場」)が来ると予測しています。その時期は、前政権の景気対策が切れる時期と現政権の政策が実行される時期の間と分析するシンクタンクが多く、異色なのは外需を中心に分析した第一生命経済研究所となっています。


①2009年度末~2010年度前半に「踊り場」


 9社中、8社はこの時期を日本経済の踊り場だと分析しています。


 原因はエコ制度の終了が迫っていること、公共投資の減少、雇用・所得環境の改善の遅れまたは悪化、円高による企業収益の悪化、海外の回復がひと段落することなどが原因と分析されています。


 内需を中心に分析した場合、子ども手当などの政策が実施されるころから、再び成長が始まるつまり、公共投資の削減効果より所得移転効果が上回るという予測が多くなっています。


②2010年度後半に「踊り場」


 今回出揃ったレポートの中で異色なのは、第一生命経済研究所の2010年度後半という予想。外需から分析を進め、米国の経済対策効果が消えること、中国が上海万博後の景気減速を迎えるという予測から、需給ギャップが供給超過の日本が再び外需に頼れなくことに注目しています。


(2)「二番底」の可能性


 各シンクタンクとも再び景気が著しく悪化する「二番底」の可能性は低いと分析しています。主な理由としては、アジアの景気回復、欧米の持ち直しからくる外需の増加です。しかし、三菱総合研究所と、みずほ総合研究所は世界経済が再び苦境に立たされる要因について分析しています。


●要因1:新政権の財政政策を巡る不透明感

●要因2:欧米の本格回復の前に景気対策効果が消えてしまうこと

●要因3:欧米金融機関の不良債権問題の長期化から再び金融システム不安が再燃すること

●要因4:新興国の成長→商品市況の高騰→先進国経済への打撃


これに対し、野村証券金融経済研究所は、過剰生産能力と過剰人件費という状況はバブル崩壊後と同じだが、住宅バブルがなかったという点でバブル崩壊後とは異なっており、じきに過剰は調整され成長が加速するという予測を立てています。


(3)金利

 通常、国債は安全資産と見なされますが、現在はすべてを疑う気持でさまざまなニュースを読み解くべきだと考えています。


需給ギャップが供給超過に大きく傾いていることから、デフレが長期化し日本銀行は低金利政策を長期間維持するとの予測が多く出ています。それを重視した分析では、長期的には円安を予測しています。しかし、財政の悪化によりインフレが発生するという経路も頭から離さないほうがいいと思われます。

税収見込みが40兆円を割れる見通しと、赤字国債の発行額が50兆円を超えるとのニュースが世間を騒がしています。


一説では財政はもうもたないという話が出ている中で、財政規律を維持するとともにマニフェストとして掲げられた政策実現のため歳出を拡大しなければならないという板挟み状態となっています。


これと関連し、民主党政権は郵政民営化の抜本的見直しを決定しました。特に郵便事業のみ全国一律サービスが義務化されていたところを郵貯、簡保にも拡大されていたところが大きく報道されていました。


郵貯簡保には個人金融資産の5分の1に当たる約300兆円が預けられています。財政投融資を通じ官に流れていた資金を自主運用に切り替え、その流れを断ち切ることによって財政の規律を取り戻そうとしたのは2001年のことでした。


現在のところ、これを国の運用へ戻す話はまだ出てきていませんが、地域経済への活用も模索しているという話が出てきていることから、運用方法の転換(国債の引き受けを強制的なものにすること)も話題に出る可能性があります。ですが、これでは財政規律を維持することは難しいのではないかと思います。


財政状態が非常に悪化している中で財政規律が緩んだという印象を与えれば、国債消化に悪影響を及ぼし金利の上昇を通じて企業活動にマイナスの影響を与える可能性があります。


財政と郵政民営化について注意して見守っていきたいと考えています。

危機を受けて各国で大量に通貨が発行されましたが、最近はインフレ懸念・財政健全化から来る出口戦略、住宅金融改革など通貨供給に影響を与える根本的な問題が浮かび上がってきています。恐慌を防ぐには、タイミングよく通貨を供給することが必要といわれています。しかし、1930年代の大恐慌時には中央銀行が通貨供給量を減らすタイミングを間違え不況が深刻化したという経緯があります。


さて、必要な改革ながら急激に進めてしまうと通貨供給量を急速に低下させ不況を深刻化させてしまう要素はどこにあるのでしょうか?


最も最近伝えられたニュースからは以下の点が取り上げられています。


①銀行


7月24日に行われた、米下院金融公聴会でバーナンキFRB議長は社名を公表しなかったものの約25社の金融機関が大きすぎてつぶせないと判断される可能性があると証言しました。そして、そのほぼすべてがFRBの監督を受けていて金融規制改革のもとFRBの権限を強化する必要があるとも証言しています。


②住宅金融


ガイトナー財務長官は24日、下院金融公聴会で住宅ローンの73%に関わっているファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)について、「両社は米国の住宅ローン市場そのものであるため、いますぐに、しっかりとした判断を下すことはできない。しかし、両社は巨大なリスクであり、両者の損失を示すことはすぐにはできない。再建を来年まで延期する。」と述べました。



銀行・住宅金融とも構造としては大きな問題を抱えながらも、政府支援があり一応の小康状態を保っています。そして、FRB議長、財務長官ともその改革に二の足を踏んでいるのです。ここでは、通貨供給量と大恐慌の研究として大まかな歴史が記載されている『資本主義と自由』(ミルトン・フリードマン)から1930年代の大恐慌の流れを見てみましょう。





< 1929年~1933年の大恐慌 - 通貨供給量から見た流れ >

出来事

フリードマンのコメント

1929年

連邦準備制度、金融引き締めへ

「投機」を防ぐため

1929年
半ば

景気のピーク

FRBの金融引き締めが原因

1929年
10/24

株式市場の大暴落

企業の景気信頼感、個人の消費意欲に影響を与える。しかし、恐慌の直接的な原因ではない。

1930年
9月/10月
通貨供給量がピーク時から3%近く減少

「この時点では今後数年にも及ぶ大幅な景気後退が起こるとは予想できなかった。ここで通貨供給量の減少を防ぐ対策をするべきだった。」

1930年
11月
銀行の倒産が相次ぎ、取り付け騒ぎが起こる

1930年
11/11
ユナイテッド・ステーツ銀行破綻

当時最大の預金量を持つ全米最大の銀行。一般の人々はその名称か
ら国営銀行だと思っていたため、心理的な影響が大きい。 銀行の倒産
自体は大した問題ではないが、通貨供給量に与えた影響は大きかった。

1931年 連鎖倒産は収まり、景気への信頼感が高まる FRBは市中銀行への貸し出し、通貨供給量を緩やかに減少させ、
自律的景気回復を抑制させる。
1931年
9月
イギリスが金本位制から離脱 金の流出を防ぐため、公定歩合引き上げ。この結果、流出は止まったが市中銀行への通貨供給が減少し、銀行の倒産が再び発生する。(※1)
1932年 FRB、国債10億ドルの買い取り 恐慌の進行が一時的に収まるが、FRBはその後再び消極姿勢へ。
1933年 銀行の休業 FRBの設立目的を達成できず。 (※2)


※1 1927年7月から1933年3月の間に、通貨供給量は3分の1減少した。減少分の3分の2は、英国の金本位制離脱後に起きている。)


※2 取り付け騒ぎ→銀行の貸し剥がし・保有証券の売却・他銀行にある預金引き出し→証券債券の下落→健全だった銀行の破たん→取り付け騒ぎの悪循環を断ち切ること


この表から読み取ると「1930年9月あるいは10月の時期の通貨供給量の減少に対処」という部分は、今回の金融危機においてクリアしていると見るべきなのではないでしょうか?つまり、アメリカ国内だけの政策だけでみると恐慌の発生を未然に防ぐという点でうまくいっていると見るべきでしょう。


この観点から①銀行、②住宅金融についての発言を見ると、通貨供給量を今の段階で減少させるべきではないという意図が読み取れます。


しかし、大恐慌の原因の一因は、イギリスの衰退とも深く関わっていてアメリカ1国だけの問題ではなかったことが表から読み取れます。現在でいうと、ロシアや中国、そしてドルを決済通貨からはずす意図を持つ様々な国々の動きも考慮に入れる必要があります。

本日、午前3時、FOMCの地区連銀経済報告(ベージュブック)が公表された。ベージュブックは連邦公開市場委員会が開催日の2週間前に公表し、公開市場操作(国債買いオペなどを通じ金融機関の資金需給を調節する)の方針を決定するのに欠かせないものである。


【要旨】
●4月中旬から5月にかけての経済状況は弱い、またはさらに悪化している。しかし、5地区からの報告によれば、その下落傾向には緩和の兆候がある。
●いくつかの地区からの報告によれば、年末にかけて大幅な好転は見込めないが、景気の先行きの見方は改善している。
●製造活動・・・ほとんどの地区で下降あるいは低い水準に留まっているが、いくつかの地区で業者による将来の展望にはいくらかの改善があった。
●非金融サービス業(医療介護など)・・・活動が縮小している。
●消費・・・弱含み。贅沢品の消費を避け、必需品の購入に絞っている。新車販売は逼迫した信用状況のため落ち込んでいる。
●観光・・・下降
●住宅販売は上向いている。住宅建設は低い水準で安定している。
●エネルギー分野は引き続き弱く、資源需要は落ち込んでいる。
●労働市場の状態は全体的に弱く、賃金は概して横ばいあるいは減少している。
●物価・・・すべての製造過程における物価の動向は横ばいか下落。注目すべき例外としては原油価格の上昇。



要旨から読み取れるように、アメリカの実体経済は引き続き悪化している。


一方、5月下旬に十分な返済能力があると見なされていたイギリス国債の格付け見通しが引き下げられたことから、市場関係者のアメリカ国債格下げ予想が強まっている。これは景気悪化を理由としたものではなく、景気の一服感あるいは底入れ予想が強まっている中、莫大な資金を市場に供給してきたためインフレ、ひいては金利上昇を引き起こし債務返済に支障をきたすのではないかという懸念が理由である。


つまり、債務返済という要因から格付け見通しが引き下げられる過程は、景気好転→インフレ→金利上昇→利払いの増加となる。


FRBは、3000億ドルにのぼる長期国債の買い取りを含む総額1兆7500億ドルもの量的緩和策を現在実施中である。上記の事態に対するFRB各理事の考え方を見てみよう。


リッチモンド連銀総裁

「現時点では(米債買い入れ規模を)拡大する理由は見当たらない。実際のところ、仮に(米債)利回りの上昇がより力強い成長によるものなら、買い入れ拡大は状況に反する。イールドカーブのスティープ化(将来の金利上昇を予想)は、実質成長に対する見通しの改善が説明として最も有力だ」


ダドリー・ニューヨーク連銀総裁

「景気見通しの改善を背景として利回りが上昇している限りは、何もするべきではない。予測された結果であるうえ、それがわれわれが望んできたことだからだ」


サンフランシスコ(SF)地区連銀のイエレン総裁

インフレ懸念が原因で米国債の売りが継続しているとしたら「当惑」すべき事態。


ライル・グラムリー元FRB理事

「このまま長期金利の上昇が続けば、景気回復が阻害される事態も想定しなければならない。資産の買い入れを拡大するなら、かなり大規模に実施しなければ効果は期待できない」



つまり、金利上昇は大部分の人の予想に既に織り込まれているということだろう。


①金利上昇を抑えるため買い取りを拡大させれば将来のインフレ予想がさらに高くなる。
②買い取り枠を増額しない場合も国債の売りを誘発し国債の利回りが上昇(国債価格は下落)→政権・財務省との対立、中国のドル資産売却の動きを誘発。


どこをみても八方ふさがりのように見える。しかし、非常時の金融政策からの脱却を成功させなければこの危機からの脱却はない。

3月19日午前3時15分にFOMC政策金利が発表されます。しかし、政策金利は下げる余地がないので、市場の関心はFRBが米国債を買い取るかどうかに集中しています。そこで、様々なニュースではどのようにこの点について書かれているかまとめておきます。


先週の630億ドルにのぼる中長期債の消化は比較的順調だったと伝えられています。投資家の間でFRBが中長期債を買い取る可能性があり、大量の国債発行によって国債価格が下落する可能性は低いという期待があったことが一因です。FOMCは昨年末あたりから「効果的と判断すれば、期間の長い米国債を購入する用意がある」と何度も公表していることが投資家の心理に影響を与えていたと考えられます。


ここで、FRBの米国債の購入は米国の信用状況がひっ迫しているかどうかによって判断されるという視点が重要です。ひっ迫していれば、国債を購入し資金を民間に流し込むという選択肢が検討されるという流れとなります。

以下、何点かこの決定に影響を与えそうな出来事を列挙したいと思います。



(1)株価、社債


最近、ダウ工業株30種平均、S&P500種はそれぞれ2,3%上昇し、その中でもシティグループ、JPモルガンは年初からは利益が出ていることから金融銘柄が上昇しています。依然として厳しいとしても改善されつつあると判断されるかどうかに注目していきたいと考えています。また、株価の上昇に伴い米国債から社債に人気が移りつつあります。これはアメリカにおける企業活動が活発になってきたことを示しています。


つまり、一時期米国債を安全資産として買っていた投資家のリスク選好意欲が高まり、国債から株式・社債に資金が移動し始めている兆候だと伝えられています。



(2)住宅金利


また、住宅金利と関連する3月17日に発表された2月住宅着工件数が58.3万件と予想を上回る結果となりました。これは利回りを下げるためFRBが国債を買い取る可能性を弱めるものです。


これらの状況から市場関係者の間では1月28日に出たFRB声明の「状況が民間信用市場の改善に特に効果的だということを示すならば、長期国債を買い取る用意もある」という部分を繰り返し、買い取りの可能性を残すのではないかという憶測が流れています。



(3)米国債がFRBによって購入された場合


①購入によって市場に資金が大量に提供されることによってインフレ懸念が台頭する。インフレによってドルの価値が下がり、償還額が変わらない国債の価値が大幅に減少する。


これに関し、外貨準備高の3分の2をドル資産で運用している中国の温家宝首相が「正直に言えば少し心配している」と懸念を表明しています。米国と中国は海南島にて軍事的な小競り合いを演じています。ニュースを読む限りではこの事件と米国債を直接関連付けて発言するものは見つけられませんが、国家間の力関係にも少なからぬ影響を与えるものと考えられます。


②アメリカの貿易赤字は膨大でありいずれは調整されなければならないという話をよく聞きますが、ドルの価値が下がることによって、輸入品の価格が上昇(輸入インフレ)し米国の経常収支が適正な水準になるまで続く。輸出が息を吹き返す。


逆に、FRBによる米国債の購入期待が高まっている中、しないと発表された場合、国債を大量に保有している投資家は大量供給による価格の下落を恐れ、売りを誘発し、ドルへの信認が低下するのではないかと考えられます。


「綱渡り」という表現は、まさに現在のアメリカ経済をたとえるのにぴったりの表現だと感じます。

今週、米国では総額1820億ドルの国債入札が行われます。


日程は以下の通りです。


3月9日(月)・・・610億ドル(3か月・6か月物TB)
3月10日(火)・・・340億ドル(4週間TB)
          240億ドル(52週間物TB)
          340億ドル(3年物)
3月11日(水)・・・180億ドル(10年物)
3月12日(木)・・・110億ドル(30年物)


発行残高は6兆ドル。それに対し年内発行額が2兆5000億ドルと巨額に上る予定であることから、様々な懸念が出ています。以下何点かニュースを整理しておきたいと思います。


(1)投資家が選好する銘柄


国債は利回りと価格が逆に動きます。利回りが下がれば価格上昇。上がれば価格が下落します。ここでは長期債(10年物、30年物)と短期債(2年物、3年物)を比較し、投資家がどの銘柄を選好しているのか見ていきたいと思います。


ニュースで伝えられているところによると


長期債利回り(↑) - 短期債利回り(↓)


その差が拡大(スティープ化)しているようです。つまり価格で見れば長期債は下落し、短期債が上昇していて、投資家は保有期間が長くリスクの高い長期債を避けていると言えます。


2兆5000億ドルに上る巨額の発行が予定されている中で、短期債に発行が偏る場合、財政赤字の性質がより悪化することが考えられます。


短期債に偏りすぎた調達で1997年にアジア新興国で経済危機が発生したことは記憶に新しいことと思います。



(2)クラウディングアウト



クラウディングアウトとは、政府による財政支出が民間の投資を抑制してしまう現象をいいます。これには2つの主要な意見があります。1つは、民間の投資を抑制してしまうという意味で財政政策は全く意味がないという意見、2つ目は失業と有休資産が存在している場合は財政支出は有効だという意見です。


もし巨額の国債発行に投資家が嫌気した場合、国債の価格は下落、つまり利回りが上昇します。長期債は様々な金利の指標となるもので、代表的なものとしては住宅金利などは深刻な影響を受けるでしょう。住宅金利の上昇は、不動産の深刻な低迷にあえぐ米国では避けなければならない事態です。


これを避けるには金融政策がその悪い影響を抑制しなければなりません。FRBは近く米国債の購入を始める公算という予想も伝えられています。この場合は、国債価格が上昇し利回りが下落します。


また、先進国の国債増発により発展途上国の国債発行と競合することによってこれらの国々の財政に影響を与える可能性があります。

 

(3)株価と国債相場


先進各国の国債増発による供給の増加という要因だけでみれば、国債の価格は下落し、利回りは上昇するでしょう。しかし、米国の株式市場が大きく下落しているため、安全逃避を理由にリスクの低い米国債に流入しています。

 

これに対し著名投資家ウォーレン・バフェットは、利回りが低い点と将来のインフレ懸念から警告を発しています。


 

(4)インフレと国債


国債は償還額が決められているものが大半なので、株式に比べインフレの発生に弱い投資対象です。

通貨の暴落→ハイパーインフレという予想をよく耳にします。では、ドルの価値を決める大きな要因は一体なんでしょうか?


いろいろあると思いますが、米国債というものに注目する必要があると思います。米国債の保有者は主に連邦準備制度及び政府が約50%、外国政府・国際機関が25%程度、民間は22%となっています。

 

つまり、国債を外国政府に買ってもらうにはアメリカ政府と外国政府との力関係が主であり、市場が決めると単純には言えないものとなっています。ドルが基軸通貨となり、それを守ってきたアメリカの様々な力が最もよくあらわれ、その力を測ることができるのが米国債だと言えます。