クラウゼヴィッツやトゥキュディデスの本などを読みながら国際ニュースを読み解きます。

中東情勢の最近のブログ記事

『原油価格の行方 - 中東情勢』シリーズ → | (5) | (4) | (3) | (2) | (1) |



前回、中東情勢について記事を書いたのは7月6日。3か月余り経ちました。今回お伝えするのは、


①米露関係:米国が東欧のミサイル防衛基地設置を撤回
②イスラエル・ロシア首脳が会談したこと
③米国国内でアフガン基本政策について論争が起きていること


に焦点を当て考えていきます。


見方1:地理的にイスラエルとアメリカを中心としたアフガニスタン駐留軍に挟撃される。→イランが不利。


今回も、ここを出発点としてニュースを考えていきましょう。

見方2:アフガニスタンに駐留することになる膨大な兵力の補給線がイランと補給線近くに勢力があるタリバン勢力により圧迫されアフガニスタン駐留軍が非常に危険な状態に陥る。また、アフガニスタンを取り囲むような位置にある上海協力機構諸国が陰に駐留軍の活動を妨害する可能性がある。→イラン有利


まずは最近の流れから見てみましょう。


10月3日、アフガニスタン東部、国際治安支援部隊(ISAF)の前線基地をタリバン兵約300人が攻撃し米兵8名が死亡。


10月4日~5日、アフガニスタン国防軍は東部および南部に展開しタリバン兵約100名を殺傷。


10月5日、パキスタン軍28000人がタリバンの補給路を断ち、周辺に兵力を配置することによって陸路を封鎖する目的でアフガン国境に近い北西部部族地域に展開。


10月6日、パキスタンにおけるタリバン運動に新指導者が誕生。


アフガニスタン東部・南部、パキスタン北西部は非常に混乱しているとみていいでしょう。これに関し、アメリカ国内では論争が起こっており、政権中枢において意見を2分するほどのものとなっています。


1つは政権中枢部の意見です。バイデン副大統領、ジョーンズ大統領補佐官(国家安全保障担当)、メニュエル首席補佐官らのグループは、「アフガンがタリバンの手に落ちる差し迫った危機はない」とし、「増派よりアルカイダに標的を絞った対策(無人攻撃機などの手段)が必要」であり、「パキスタン・アフガン国境付近のアルカイダの聖域に対策を絞る必要がある」というものです。


もう1つは軍関係者の見解です。アフガン駐留軍・ISAF司令官を兼任しているマクリスタル司令官は、「(増派がなければ)1年以内に情勢を反転させないと(タリバン)掃討が不可能になる。」として、年内完了の2万1千人の増派に加え、最大4万人の増派を公式にオバマ大統領に求める予定と伝えられています。また、政権中枢部グループの意見を「短絡的」として批判しています。


これについて、政権を2分しているという見方と意見をあぶりだしている段階で最終的に大統領が決断するとの見方がありますが、どのような形になるのか注目する必要があります。

見方3:パキスタン経由の危険な補給線だけでなく、ロシア経由でアフガニスタンへの補給をする必要が生じ、対立してきたアメリカはロシアとの関係改善が必要になる。→イランが有利


9月17日、オバマ政権は東欧におけるミサイル防衛計画を全面的に見直す(中止)と発表しました。


ロシアとアメリカの関係を改善させるための決定です。 東欧におけるアメリカのミサイル防衛計画とは、ポーランドに迎撃ミサイルを配備し、チェコにレーダー施設を建設するというものです。このミサイル防衛計画をロシアは自国を標的としたものだととらえ、反発してきました。そしてキルギス、グルジア、ウクライナ等の旧ソ連圏の国家で起こった親米政権の樹立(革命)と合わせて考慮した結果、ロシアは中国との連携を優先させてきました。


アメリカのような海軍国の伝統的な戦略は、ユーラシア大陸の国々が一致団結するのを防ぎ、大陸から海に進出する勢力が生まれるのを防ぐというものです。今回の決定は、今まで上海協力機構を通じアメリカに対抗してきたロシアと中国の関係が変化する重要な一歩だと見ることができるでしょう。


しかし、アフガンへの増派は隣接するロシアや中国にとっての懸念事項であるため、ロシアの協力は得られやすくなりつつあると言えども、注意して観察していく必要があると考えられます。ロシアは、今回のアメリカの決定を歓迎しつつ、疑いの目をもってイランへの武器供給などでアメリカを牽制していくことと考えられます。


この文脈の中で、次の見方4でロシアとイランの関係、イスラエルとイランの関係を見ていきます。

見方4:状況が不利になったイスラエルはアフガニスタンのイラン側を支援するため単独でイラン空爆。


中国の力の増大によって、アメリカと中国は資源、勢力等で世界的な競争関係に入っていくことと考えられます。そのため、いずれ何かしらの紛争が発生する可能性さえ考慮しなければなりません。問題は、いつ、どこで発生するかであり、それぞれの地域では自国周辺で起こらないよう様々な駆け引きが行われる可能性が高いと思います。


今回の東欧におけるミサイル防衛計画の中止は、ロシア・中国とアメリカの対立からロシアが一歩後退することを意味していると考えられ、ヨーロッパが「世界的な競争関係」から生じる争いから解放される可能性を示唆するものであり、ヨーロッパ各国は概してこの決定を肯定的に捉えています。


「見方4」では、イスラエルとイランの間で起こる可能性がある紛争を、この「アメリカと中国の世界的な競争関係」の中東版として捉えてみようと考えていました。


今回は、今までイランの後ろ盾として行動しているロシアとイスラエル首脳が会談したという話について考えていきたいと思います。


まずは、最近の動きから見てみましょう。


< 中東・アフガニスタン周辺の最近の動き >

出来事

4/10

ロシアがイスラエルから無人偵察機購入を決定

8月

メドベージェフ大統領とイスラエル・ペレス大統領の会談

もし、イスラエルがイランを攻撃したら、ロシアはイランを支援するかという質問に、「イスラエルはイランに対する軍事攻撃の計画を持っていないと語った。私はそれを信じる。」

9/7 メドベージェフ大統領、イスラエル・ネタニヤフ首相の会談 ロシアに、イランへの対空ミサイル、シリアへの対戦車ミサイル、レバノンのヒズボラへの支援等をやめるよう求める。
9/19 国際原子力機関(IAEA)、イスラエルに核査察受け入れと核拡散防止条約への加盟を求める 日米反対、中国・ロシア賛成。イスラエルは「協力しない」。
9/23 米露首脳会談

ロシアはアメリカに「中東非核化」を提唱し、イスラエルに圧力をかけるよう求める。

9/27・28 イラン、ミサイル実験

イスラエル・ペルシャ湾岸諸国を射程内に収める

9/28 ロシアの談話 「今は感情にまかせて行動すべきではない。我々は冷静になるよう努めるべきであり、イランとの生産的な交渉プロセスを開始することが肝要だ。10月1日に行われる国連安全保障理事会にイランは手ぶらでは来ないよう期待する。」
9/29 イラン 国際原子力機関(IAEA)の核査察受け入れへ
10/7 米政府・議会、イランへの追加制裁準備 金融、燃料など包括的な制裁を準備
10/8 国際テロ組織アルカイダ、新疆ウイグルでの対応に対し中国に報復宣言


ロシアとアメリカが協力できる可能性が高まるにつれて、イラン・イスラエル間の対立が、「アメリカと中国の世界的競争関係から生じる戦争」という文脈から、「地域的な対立関係」へとその規模を縮小させつつあると考えることはできないでしょうか?


しかし、冷戦時代は各国間の争いが抑制されたものとなっていたが、ソ連解体後押さえつけられた民族間の争いが表面化したように、「地域的な対立関係」にスケールが縮小される方が紛争が起こりやすくなると考えられます。

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さて、前回4月1日の記事から2か月が経ち、中東の情勢もかなり変化しています。今回も、4つの見方を軸として中東情勢を見ていきましょう。

見方1:地理的にイスラエルとアメリカを中心としたアフガニスタン駐留軍に挟撃される。→イランが不利。


今回も、この見方1から各国がどのような牽制を行っているか見ていきましょう。


見方2:アフガニスタンに駐留することになる膨大な兵力の補給線がイランと補給線近くに勢力があるタリバン勢力により圧迫されアフガニスタン駐留軍が非常に危険な状態に陥る。また、アフガニスタンを取り囲むような位置にある上海協力機構諸国が陰に駐留軍の活動を妨害する可能性がある。→イラン有利


6月15日、ロシアにて上海協力機構・首脳会議が開催されエカテリンブルク宣言が発表されました。ここでは、アメリカ、ドルに対抗する意味合いの話し合いがなされると共に、キルギスにおける米軍の拠点であるマナス空軍基地の存続が決定されたと報じられています。


キルギスは今年2月、米軍の中央アジア駐留を嫌うロシアからの20億ドルの支援と引き換えに米軍駐留の拒否を表明していました。しかし、3月27日、上海協力機構・アフガニスタン特別会合に日米が招待されるなど反米色の色濃い組織ながら微妙な動きがあったことから注目されてきました。


今回のキルギスにおける米軍基地の存続決定にはいくつかの注目すべき点があります。


1. 物資輸送センターを新設
2. 非軍需物資に限定される
3. 年間基地使用料が17億円から57億円へと約3倍に跳ね上がっている。


キルギスにおける米軍基地の存続は以下の点とあわせて理解すべきでしょう。


見方3:パキスタン経由の危険な補給線だけでなく、ロシア経由でアフガニスタンへの補給をする必要が生じ、対立してきたアメリカはロシアとの関係改善が必要になる。→イランが有利


米露は激しく対立しながらも、ロシアはアメリカに何かしらの譲歩を与えてきました。特に中央アジアにアメリカ軍が駐留することについて、ロシアはアメリカを完全に排除しようとはしていないという印象を受けます。


米軍が中央アジアに進出して以来、中国の新疆ウイグル自治区における暴動は非常に大規模なものになってきています。これは米軍の駐留と無関係だとは言い切れません。推測の域はでませんが、中央アジアにおける中国のライバルとしてロシアは近隣諸国(イラン・インド等)、アメリカをこの地域に関与させ、中国をけん制したいと考えていると思います。


このような情勢の中、7月6日米露首脳会談が行われます。ここでの注目点は2点です。


1. 戦略核弾頭の削減目標を盛り込む枠組み文書の合意
2. アメリカのミサイル防衛東欧配備計画に対するロシアの反応とアメリカの出方


ロシア側は、東欧に配備されるミサイル防衛網がイランに対してのものだというアメリカ側の説明を拒否し、あくまでもロシアに対抗するためのものだと考えています。MD網の配備は次にみる見方4と関連があります。


見方4:状況が不利になったイスラエルはアフガニスタンのイラン側を支援するため単独でイラン空爆。


7月5日、バイデン米国副大統領はイスラエルにはイランの核開発を阻止するために軍事行動を起こす「主権国家としての権利」があると発言しました。そして、「イスラエルは主権国家として、自国の最大の利益が何か自ら決定できる。ネタニヤフ政権が現行と異なる行動方針を決めても、それは彼らの主権の問題であり、われわれが選択したものではない」とも発言しています。


7月6日、イスラエルは潜水艦1隻を紅海での演習に参加させるためスエズ運河を通過させました。ニュースでは、イランにメッセージを送る意図があると書かれています。


しかし、米露首脳会談が同時に控えていることから、イランに直接メッセージを送るというよりもこの米露首脳会談に圧力をかける目的があるのではないかと考えています。つまり、イランを支援しているロシアにアメリカは譲歩せずMD網を東欧に計画通り配備してほしいというメッセージです。ロシアへの譲歩は、イランに対する軍事攻撃にエスカレートする可能性があるというメッセージとも受け取れます。


7月5日のバイデン副大統領の「われわれが選択したものではない」という発言は、イスラエルに対する牽制の意味が込められていると読み取れるでしょう。


米露間の関係改善は、見方3から必然的にイランを有利な立場に立たせてしまうためにイスラエルは牽制を行っていると見ることができると思います。


イラン・イスラエル間の関係は、前回記事を書いた時よりも切迫の度合いが高まっていると感じています。

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米国の経済危機やオバマ政権の戦略見直し等を受け原油価格に影響を与える中東情勢が動き始める兆候が出てきています。以前書いた4つの見方を軸として中東情勢の動きを見ていきます。


見方1:地理的にイスラエルとアメリカを中心としたアフガニスタン駐留軍に挟撃される。→イランが不利。

オバマ政権は3月27日にアフガニスタンに対する包括的な戦略を公表しました。この中で、アフガン軍の訓練支援を目的に追加的に4000人を増派すると公表しました。既に決定されている1万7000人と合わせ2万1000人、合計で6万人に膨れ上がる見込みとなっています。


これだけで考えるなら、イスラエル、米軍が2011年まで駐留するイラク、増派されるアフガン・・・イランが挟まれ非常に不利な状態のように見えますが・・・


見方2:アフガニスタンに駐留することになる膨大な兵力の補給線がイランと補給線近くに勢力があるタリバン勢力により圧迫されアフガニスタン駐留軍が非常に危険な状態に陥る。また、アフガニスタンを取り囲むような位置にある上海協力機構諸国が陰に駐留軍の活動を妨害する可能性がある。→イラン有利

上海協力機構(SCO)は米国のアフガニスタンにおける対テロ戦争を支援すると共に、陰では中央アジアに駐留している米軍の撤退を促し妨害してきた経緯があります。しかし、今回ロシアで開催されるSCOのアフガン特別会議には日米が招待されています。


今まで米国を標的にしてきた組織がなぜここで日米を招待するのでしょうか?


それは成長が鈍化したとはいえ6%以上の成長が見込まれ着実に力をつけている中国がもともとロシアの土地であった中央アジアへ進出することへのロシアの警戒心が表れていると考えられます。また、中国とインド洋にて激しい勢力争いをしているインドもこの上海協力機構のオブザーバーとして参加していることから将来的には組織の目的が、米国を標的としたものから中国の力の増大に対処するための組織として変化する兆候とも受け取れます。


つまり、今まで米国を標的にし一致してきた中国とロシアが微妙な関係となってきたということでしょう。


そこから次の見方3を見ていきます。


見方3:パキスタン経由の危険な補給線だけでなく、ロシア経由でアフガニスタンへの補給をする必要が生じ、対立してきたアメリカはロシアとの関係改善が必要になる。→イランが有利

ブッシュ政権時は東欧、グルジア等を動かしロシアのすぐ隣まで進出した米国でしたが、現在ではグルジアがロシアに敗北し東欧は経済的に行きずまっています。米国がこれらの国々をサポートしようとしても米国自身が傷ついているため、ロシアから見ると圧迫感が弱まり米国と関係を改善しやすい状況になってきていると考えられます。


これを裏付けるようにロシアのラブロフ外相は、アフガンに展開する北大西洋条約機構(NATO)軍への物資を輸送するためロシア領内を通過することを許可することに前向きの姿勢を示していると伝えられています。


また、イランとアメリカが直接交渉するというニュースも伝わっていることから、中東情勢をイランとイスラエルの対立という観点からみた場合、ますますイスラエルにとって容認できない事態となってきているのです。


それでは、イスラエル国内は現在どうなっているかというと・・・


見方4:状況が不利になったイスラエルはアフガニスタンのイラン側を支援するため単独でイラン空爆。

3月31日、核開発を行うイランを「人類やイスラエルにとっての最大の危機だ」と警戒心を露わにしている右派ネタニヤフが首相に就任しました。イスラエル国民の反応や誕生した政権の性格は、イスラエルを取り巻く環境からも読み取れることでしょう。


また、イスラエル国内のこの動きはこの国が置かれている国際的な情勢と相まって単独でも軍事行動を起こす可能性が増していると考えることができるでしょう。

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米国は上下院ともイスラエルを支持する決議案を採択し、ブッシュ大統領もイスラエル支持を表明していました。それにもかかわらず、ハマスへ即時停戦を求め、イスラエルの完全撤退にも言及した国連決議案に米国が拒否権を行使せず棄権に留まったことにイスラエルは衝撃を受けていると伝えられています。ここからイスラエル当局はオバマ次期米国大統領が就任する1月20日までに事態にめどをつけるためにあせっているというニュースもありました。


また、反米を掲げる南米のベネズエラは米国に対抗しガザにエジプトを経由して支援物資を送るなど、中東あるいはその周辺に留まらない広範な影響を世界に与えるようになってきました。


では、まずはイスラエルとガザ周辺から最近の出来事をまとめていきたいと思います。


現在、エジプトの調停案が注目されています。ニュース等で注目されているポイントは3つです。


①ハマスによるロケット発射を防ぐ

ガザ・シティを中心としてイスラエル南部はこのロケットに悩まされてきました。ハマスは主に旧ソ連製の愛称「カチューシャ」と呼ばれるロケット弾を使用しています。これを抑え込むことが選挙が近いイスラエルの現政権にとって至上命題となっています。


それを踏まえハマスを軍事的に無効化(=ハマスの打倒)することを目標としていると言われています。逆に、それに失敗した場合はハマスの実効支配が国際的に認知されることとなり昨年夏に発生したレバノン・ヒズボラとの紛争と同様の結果になります。


②カザ地区の境界線の管理強化

エイパック(AIPAC)の記事によれば、エジプト-ガザ間11kmの間に武器搬送ルートが300ほど存在しているようです。この境界をエジプト治安部隊が管理し、ウェストバンクを管理しているアッバス議長率いるファタハの治安部隊がガザを管理するというものです。


③ハマスの法的地位

②に関連して、現在イスラエルのガザ侵攻を非難する声が世界的に高まっています。抗議デモが発生しているのはニュースによって伝えられているだけでも、米国、エジプト、アルジェリア、ヨルダン、スペイン、フィリピン、ドイツ、日本など多くの国で行われているようです。ハマスは、これら世界的な動きから、また選挙を経たものであることからガザを実効支配する正統性を主張しています。


当初イスラエルはPLOとの紛争との関連でハマスを支援していました。ハマスという組織にはさまざまな部門がありますが、もともと住民の教育・医療・福祉などに携わってきた経緯もあり住民の間では支持する声が高いと言われています。③の法的地位まで変えることができるかは微妙な情勢です。


では、前回中東について書いた4つの「見方」を最近の動きと関連合わせてもう少し詳しく見ていきたいと思います。以下、イランとイスラエルとの関係をアフガニスタンに注目して書いていきます。


見方1:地理的にイスラエルとアメリカを中心としたアフガニスタン駐留軍に挟撃される。→イランが不利。

見方2:アフガニスタンに駐留することになる膨大な兵力の補給線がイランと補給線近くに勢力があるタリバン勢力により圧迫されアフガニスタン駐留軍が非常に危険な状態に陥る。また、アフガニスタンを取り囲むような位置にある上海協力機構諸国が陰に駐留軍の活動を妨害する可能性がある。→イラン有利。


<上海協力機構と米国>
●2005年に上海協力機構が出した共同宣言では米軍の中央アジアからの撤退要求が出され、ウズベキスタンからは撤退することになりました。しかし、莫大な基地使用料を得ることができるためキルギスの米軍基地は存続しています。12月末時点では、カザフスタン・ウズベキスタンとの間で再び米軍基地設置の話が持ち上がってきています。





見方3:パキスタン経由の危険な補給線だけでなく、ロシア経由でアフガニスタンへの補給をする必要が生じ、対立してきた米国はロシアとの関係改善が必要になる。→イランが有利。

<代替補給路の確立>
1.アゼルバイジャン、トルクメニスタン、ウズベキスタン経由の補給路を検討(米軍、NATO)
2.アフガニスタンの約7割はタリバンに実効支配されているとも言われていて、たびたびアフガニスタン駐留軍の補給路を脅かしています。


<米国-ロシア関係>
●米国-グルジアの関係強化・・・グルジアのNATO加盟推進、グルジア軍の装備向上・訓練協力。安全保障・経済・民主化・人的交流がポイント→旧ソ連の領域なのでロシアの反発を招く可能性が高い。


<ロシア-EU関係>
1.ロシアからEUへの、ウクライナ経由の天然ガス供給停止・・・EUはノルウェー・オランダに供給要請、石油発電への代替を検討→原油価格を見る上で重要なポイントとなります。
2.天然ガスの国内への供給という観点では、ブルガリア・スロバキア・セルビア・マケドニアで深刻、ギリシア・オーストリア・チェコではこれから深刻な事態になる→NATOの東方拡大を嫌うロシアはヨーロッパを分断しようとしているとみることができます。






見方4:状況が不利になったイスラエルはアフガニスタンのイラン側を支援するため単独でイラン空爆。

<イラン空爆へのステップ>
1.アメリカからイスラエルへ地中貫通爆弾「バンカーバスター」の供与
2.イラン核施設まで飛行するための給油支援
3.米軍が管理するイラク上空の飛行許可


以前、イスラエルは米国にこれら3つの要請をしましたが、ブッシュ大統領はそれを拒否したという経緯があります。引き続きオバマ次期政権においても3つの要求がイラン-イスラエル間の関係を見るときのポイントとなりそうです。

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以前の記事では、原油価格を見るときのポイントを大まかに5つほど列挙しました。


(1)国際情勢(特に中東)

(2)OPECの産出量・在庫↑→ 原油価格↓

(3)天気(暖房油の需要)・・・寒い → 原油価格↑

(4)産油国におけるストライキ → 原油価格↑

(5)突発事件・天災地変 → 原油価格↑



今回は、(1)国際情勢(中東)についての内容です。


12月19日、中東ガザを実効支配するハマスとイスラエルの停戦合意の期限が切れ紛争が激化しています。今回の紛争は中東情勢に深く関わる米国の政権移行期に行われ、イスラエルの内政状態、イスラエルと周辺諸国との関係等広範な影響を与えています。


最近のニュースを読んでいると、中東への関心は最終的には


①アメリカあるいはイスラエルによるイラン空爆はあり得るのだろうか?

②それがアラブ諸国との全面戦争につながるのだろうか?


という部分に絞り込まれます。


②が中東が完全に不安定になる予想の一つで、そこから各分析家が各種条件等を考慮しそこまではいかないだろうという予想を立てているわけです。


つまり、中東のみに絞ると、


「イスラエルとイランの関係」


が中東情勢を見る時のポイントです。


では、さらに視野を広げてそれぞれの後ろ盾を見ていきましょう。


●ロシア・上海協力機構⇔米国(対立)

●イスラエル←米国(支援)

●イラン←ロシア(支援)


ロシアは2008年8月のグルジア紛争においてグルジアが利用していたイスラエル製兵器を破壊し、それを見た湾岸協力会議諸国(GCC:サウジ・クゥエート等6カ国)はロシアからの武器購入を要請したという情報があります。ロシアはイランの原子力開発を支援し、イランとシリアに対し対空ミサイルを売却するというニュースが出ています。事実上の核保有国とみられるイスラエルはイランが防空能力を高めることに反発しています。


それに対し、アメリカはイスラエルに対し、現在ではNATO諸国と日本にのみに適用している「核の傘」を提供するというオバマ次期政権の意向が伝えられています。これに対しイランの核兵器保有を認めないイスラエル政府は、「核の傘」の提供はイランの核保有を前提にしている可能性があり、イスラエル単独でイラン空爆を計画しているグループからは一部反発が出ているようです。


では、非常に複雑な中東情勢を今後どのように占えばいいのか・・・いろいろ切り口はあるでしょうが、やはり「アフガニスタン」がキーワードになるのではと考えています。オバマ次期米国大統領がイラクからアフガニスタンへ重心を移すと発言しているからです。


見方1:地理的にイスラエルとアメリカを中心としたアフガニスタン駐留軍に挟撃される。→イランが不利。


見方2:アフガニスタンに駐留することになる膨大な兵力の補給線がイランと補給線近くに勢力があるタリバン勢力により圧迫されアフガニスタン駐留軍が非常に危険な状態に陥る。また、アフガニスタンを取り囲むような位置にある上海協力機構諸国が陰に駐留軍の活動を妨害する可能性がある。→イラン有利。


見方3:パキスタン経由の危険な補給線だけでなく、ロシア経由でアフガニスタンへの補給をする必要が生じ、対立してきた米国はロシアとの関係改善が必要になる。→イランが有利。


見方4:状況が不利になったイスラエルはアフガニスタンのイラン側を支援するため単独でイラン空爆。


いずれにしても2009年の国際情勢は引き続き非常にキナ臭い話がたくさん出てきそうで、投資家の心理は国際情勢という要素から見た場合、原油価格を引き上げる方向に向くのではないかと考えられます。