クラウゼヴィッツやトゥキュディデスの本などを読みながら国際ニュースを読み解きます。

キルギス情勢

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個人的には2005年の「チューリップ革命」からすでに5年が経っている。ホームページ作成を始めたころで、食い入るように毎日ニュースを読んでいた時期だ。もし国際社会がある程度安定しているならこのような巻き返しの動きをたった5年で目撃するようなことはなかっただろう。



様々な記事において、今回のキルギスでの混乱は、2005年のアメリカによる勢力拡大をロシアが押し返したものとして伝えられている。バキエフ大統領は、首都ビシュケクから南部のジャラル・アバドに逃れ、政権が崩壊したと報じられた。



2010年4月7日、メドベージェフ大統領はキルギスの状況を「キルギスの内政問題だ」とし、「キルギスは重要なパートナーであり、事態の推移を注視している」と発言した。その一方で、「政権に対する一般市民の怒りが非常に強かった」とも述べ、バキエフ政権に対する市民の不満をロシアのキルギスに対する不満と重ね合わせた。(キルギスにおける米軍の存在を認めているバキエフ大統領に不満を持っていたとされている)



4月8日、ロシアは自国民、ロシア外交官の保護を名目に空挺部隊をキルギスに派遣した。この時、カザフスタンはロシア部隊の領空通過を認めている。私は、ここで国家のパワーとは自国の行動を他国に追認させる有形・無形の力とも言えるのではないか感じた。



同日、中国外務省の報道官は、「今のところ、中国大使館や中国企業の職員は無事であり、華僑華人に死傷者がでたという報告もない」としたが、翌日9日(つまりロシアのキルギス派兵後)には、中国の政府・共産党の機関紙としての性格を持つ人民日報でキルギスにおける中国人の被害が伝えられた。



日本における「自国民の生命と財産の保護」という表現には、それ以上の何かは何も含まれていないと考えられがちだ。しかし、第2次世界大戦時、ドイツによるチェコ・ズデーテン地方の要求が「ドイツ系住民の安全」を図ることにあったことを考えると、これはもう立派な戦争へ至る重大な表現だと考える必要がある。また、中国の場合は「華僑華人」も「安全と財産の保護」の対象とされているため、外国人参政権を巡る日本国内の議論においても大きな懸念材料だと言える。きれいさっぱりこのアイデアを捨て去り、経済連携協定を結んだ国家との間で職業訓練等のサポートを充実させることができる部分での付き合いに思考を戻すべきだと思う。



中国もまたキルギスを重大な関心をもって眺めている。アメリカがこの地域から去った後は容赦のないロシアと中国による分割・細分化という事態も念頭に置いておく必要がある。カザフスタンは今回ロシア部隊の領空通過を認めたと伝えられているが、深まる経済関係を生かし、中国がカザフに圧力をかける可能性も高まっていくことだろう。(中国は、カザフスタンをロシアから引き離し、中央アジアへの重要な足がかりをロシアから奪おうとするはずだ。)



また、国境を接する新疆ウイグル自治区の独立派がキルギス情勢の混乱と連動しているという事態を中国が重く見ている記事もあった。



ロシアは、将来ほかの成長を遂げている国と比べて潜在的に条件が劣っていることを認識しているものと思われため、中国との中央アジア、シベリアにおける状況は劣勢だと考えていると思う。



新聞で伝えられている通り、キルギス・マナス空港の米軍基地をロシアはよく思っていない。しかし、この地域から米軍が去っていくことも恐れているはずだ。



アフガニスタンへの補給では、アメリカに一定の便宜が図られることになるのではないかと思っている。



これについては注意深く見る必要がある。



まず今回、臨時政府を作ることになる側はもともとは米軍の撤退を求めていたとされている。ロシアの圧力がなければそれは完全な撤退を求める動きとなる可能性もあっただろう。



しかし、ロシアの介入とともに、野党側のオトゥンバエワ氏は国際的な合意を守りながら最終的には国益を重視すると発言したため、トーンダウンしたと考えることはできないだろうか?



米ロの核軍縮をめぐる動き、ロシアのキルギスへの介入に対するアメリカ側の反応の弱さ(もちろん懸念は出されている)などを考慮して以上のように考えてみた。

 

キルギスはアメリカ、ロシア、中国に接した地域である。そして、朝鮮半島、日本もまたアメリカ、ロシア、中国に接した地域だ。中央アジアが置かれている環境のうちのいくつかは、日本にも当てはまるはずである。客観的に自分を眺めるつもりでこの地域に注目していきたい。

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