クラウゼヴィッツやトゥキュディデスの本などを読みながら国際ニュースを読み解きます。

2009年6月アーカイブ

本日、午前3時、FOMCの地区連銀経済報告(ベージュブック)が公表された。ベージュブックは連邦公開市場委員会が開催日の2週間前に公表し、公開市場操作(国債買いオペなどを通じ金融機関の資金需給を調節する)の方針を決定するのに欠かせないものである。


【要旨】
●4月中旬から5月にかけての経済状況は弱い、またはさらに悪化している。しかし、5地区からの報告によれば、その下落傾向には緩和の兆候がある。
●いくつかの地区からの報告によれば、年末にかけて大幅な好転は見込めないが、景気の先行きの見方は改善している。
●製造活動・・・ほとんどの地区で下降あるいは低い水準に留まっているが、いくつかの地区で業者による将来の展望にはいくらかの改善があった。
●非金融サービス業(医療介護など)・・・活動が縮小している。
●消費・・・弱含み。贅沢品の消費を避け、必需品の購入に絞っている。新車販売は逼迫した信用状況のため落ち込んでいる。
●観光・・・下降
●住宅販売は上向いている。住宅建設は低い水準で安定している。
●エネルギー分野は引き続き弱く、資源需要は落ち込んでいる。
●労働市場の状態は全体的に弱く、賃金は概して横ばいあるいは減少している。
●物価・・・すべての製造過程における物価の動向は横ばいか下落。注目すべき例外としては原油価格の上昇。



要旨から読み取れるように、アメリカの実体経済は引き続き悪化している。


一方、5月下旬に十分な返済能力があると見なされていたイギリス国債の格付け見通しが引き下げられたことから、市場関係者のアメリカ国債格下げ予想が強まっている。これは景気悪化を理由としたものではなく、景気の一服感あるいは底入れ予想が強まっている中、莫大な資金を市場に供給してきたためインフレ、ひいては金利上昇を引き起こし債務返済に支障をきたすのではないかという懸念が理由である。


つまり、債務返済という要因から格付け見通しが引き下げられる過程は、景気好転→インフレ→金利上昇→利払いの増加となる。


FRBは、3000億ドルにのぼる長期国債の買い取りを含む総額1兆7500億ドルもの量的緩和策を現在実施中である。上記の事態に対するFRB各理事の考え方を見てみよう。


リッチモンド連銀総裁

「現時点では(米債買い入れ規模を)拡大する理由は見当たらない。実際のところ、仮に(米債)利回りの上昇がより力強い成長によるものなら、買い入れ拡大は状況に反する。イールドカーブのスティープ化(将来の金利上昇を予想)は、実質成長に対する見通しの改善が説明として最も有力だ」


ダドリー・ニューヨーク連銀総裁

「景気見通しの改善を背景として利回りが上昇している限りは、何もするべきではない。予測された結果であるうえ、それがわれわれが望んできたことだからだ」


サンフランシスコ(SF)地区連銀のイエレン総裁

インフレ懸念が原因で米国債の売りが継続しているとしたら「当惑」すべき事態。


ライル・グラムリー元FRB理事

「このまま長期金利の上昇が続けば、景気回復が阻害される事態も想定しなければならない。資産の買い入れを拡大するなら、かなり大規模に実施しなければ効果は期待できない」



つまり、金利上昇は大部分の人の予想に既に織り込まれているということだろう。


①金利上昇を抑えるため買い取りを拡大させれば将来のインフレ予想がさらに高くなる。
②買い取り枠を増額しない場合も国債の売りを誘発し国債の利回りが上昇(国債価格は下落)→政権・財務省との対立、中国のドル資産売却の動きを誘発。


どこをみても八方ふさがりのように見える。しかし、非常時の金融政策からの脱却を成功させなければこの危機からの脱却はない。