クラウゼヴィッツやトゥキュディデスの本などを読みながら国際ニュースを読み解きます。

2009年4月アーカイブ

『原油価格の行方 - 中東情勢』シリーズ → | (5) | (4) | (3) | (2) | (1) |


米国の経済危機やオバマ政権の戦略見直し等を受け原油価格に影響を与える中東情勢が動き始める兆候が出てきています。以前書いた4つの見方を軸として中東情勢の動きを見ていきます。


見方1:地理的にイスラエルとアメリカを中心としたアフガニスタン駐留軍に挟撃される。→イランが不利。

オバマ政権は3月27日にアフガニスタンに対する包括的な戦略を公表しました。この中で、アフガン軍の訓練支援を目的に追加的に4000人を増派すると公表しました。既に決定されている1万7000人と合わせ2万1000人、合計で6万人に膨れ上がる見込みとなっています。


これだけで考えるなら、イスラエル、米軍が2011年まで駐留するイラク、増派されるアフガン・・・イランが挟まれ非常に不利な状態のように見えますが・・・


見方2:アフガニスタンに駐留することになる膨大な兵力の補給線がイランと補給線近くに勢力があるタリバン勢力により圧迫されアフガニスタン駐留軍が非常に危険な状態に陥る。また、アフガニスタンを取り囲むような位置にある上海協力機構諸国が陰に駐留軍の活動を妨害する可能性がある。→イラン有利

上海協力機構(SCO)は米国のアフガニスタンにおける対テロ戦争を支援すると共に、陰では中央アジアに駐留している米軍の撤退を促し妨害してきた経緯があります。しかし、今回ロシアで開催されるSCOのアフガン特別会議には日米が招待されています。


今まで米国を標的にしてきた組織がなぜここで日米を招待するのでしょうか?


それは成長が鈍化したとはいえ6%以上の成長が見込まれ着実に力をつけている中国がもともとロシアの土地であった中央アジアへ進出することへのロシアの警戒心が表れていると考えられます。また、中国とインド洋にて激しい勢力争いをしているインドもこの上海協力機構のオブザーバーとして参加していることから将来的には組織の目的が、米国を標的としたものから中国の力の増大に対処するための組織として変化する兆候とも受け取れます。


つまり、今まで米国を標的にし一致してきた中国とロシアが微妙な関係となってきたということでしょう。


そこから次の見方3を見ていきます。


見方3:パキスタン経由の危険な補給線だけでなく、ロシア経由でアフガニスタンへの補給をする必要が生じ、対立してきたアメリカはロシアとの関係改善が必要になる。→イランが有利

ブッシュ政権時は東欧、グルジア等を動かしロシアのすぐ隣まで進出した米国でしたが、現在ではグルジアがロシアに敗北し東欧は経済的に行きずまっています。米国がこれらの国々をサポートしようとしても米国自身が傷ついているため、ロシアから見ると圧迫感が弱まり米国と関係を改善しやすい状況になってきていると考えられます。


これを裏付けるようにロシアのラブロフ外相は、アフガンに展開する北大西洋条約機構(NATO)軍への物資を輸送するためロシア領内を通過することを許可することに前向きの姿勢を示していると伝えられています。


また、イランとアメリカが直接交渉するというニュースも伝わっていることから、中東情勢をイランとイスラエルの対立という観点からみた場合、ますますイスラエルにとって容認できない事態となってきているのです。


それでは、イスラエル国内は現在どうなっているかというと・・・


見方4:状況が不利になったイスラエルはアフガニスタンのイラン側を支援するため単独でイラン空爆。

3月31日、核開発を行うイランを「人類やイスラエルにとっての最大の危機だ」と警戒心を露わにしている右派ネタニヤフが首相に就任しました。イスラエル国民の反応や誕生した政権の性格は、イスラエルを取り巻く環境からも読み取れることでしょう。


また、イスラエル国内のこの動きはこの国が置かれている国際的な情勢と相まって単独でも軍事行動を起こす可能性が増していると考えることができるでしょう。