クラウゼヴィッツやトゥキュディデスの本などを読みながら国際ニュースを読み解きます。

2009年3月アーカイブ

3月19日午前3時15分にFOMC政策金利が発表されます。しかし、政策金利は下げる余地がないので、市場の関心はFRBが米国債を買い取るかどうかに集中しています。そこで、様々なニュースではどのようにこの点について書かれているかまとめておきます。


先週の630億ドルにのぼる中長期債の消化は比較的順調だったと伝えられています。投資家の間でFRBが中長期債を買い取る可能性があり、大量の国債発行によって国債価格が下落する可能性は低いという期待があったことが一因です。FOMCは昨年末あたりから「効果的と判断すれば、期間の長い米国債を購入する用意がある」と何度も公表していることが投資家の心理に影響を与えていたと考えられます。


ここで、FRBの米国債の購入は米国の信用状況がひっ迫しているかどうかによって判断されるという視点が重要です。ひっ迫していれば、国債を購入し資金を民間に流し込むという選択肢が検討されるという流れとなります。

以下、何点かこの決定に影響を与えそうな出来事を列挙したいと思います。



(1)株価、社債


最近、ダウ工業株30種平均、S&P500種はそれぞれ2,3%上昇し、その中でもシティグループ、JPモルガンは年初からは利益が出ていることから金融銘柄が上昇しています。依然として厳しいとしても改善されつつあると判断されるかどうかに注目していきたいと考えています。また、株価の上昇に伴い米国債から社債に人気が移りつつあります。これはアメリカにおける企業活動が活発になってきたことを示しています。


つまり、一時期米国債を安全資産として買っていた投資家のリスク選好意欲が高まり、国債から株式・社債に資金が移動し始めている兆候だと伝えられています。



(2)住宅金利


また、住宅金利と関連する3月17日に発表された2月住宅着工件数が58.3万件と予想を上回る結果となりました。これは利回りを下げるためFRBが国債を買い取る可能性を弱めるものです。


これらの状況から市場関係者の間では1月28日に出たFRB声明の「状況が民間信用市場の改善に特に効果的だということを示すならば、長期国債を買い取る用意もある」という部分を繰り返し、買い取りの可能性を残すのではないかという憶測が流れています。



(3)米国債がFRBによって購入された場合


①購入によって市場に資金が大量に提供されることによってインフレ懸念が台頭する。インフレによってドルの価値が下がり、償還額が変わらない国債の価値が大幅に減少する。


これに関し、外貨準備高の3分の2をドル資産で運用している中国の温家宝首相が「正直に言えば少し心配している」と懸念を表明しています。米国と中国は海南島にて軍事的な小競り合いを演じています。ニュースを読む限りではこの事件と米国債を直接関連付けて発言するものは見つけられませんが、国家間の力関係にも少なからぬ影響を与えるものと考えられます。


②アメリカの貿易赤字は膨大でありいずれは調整されなければならないという話をよく聞きますが、ドルの価値が下がることによって、輸入品の価格が上昇(輸入インフレ)し米国の経常収支が適正な水準になるまで続く。輸出が息を吹き返す。


逆に、FRBによる米国債の購入期待が高まっている中、しないと発表された場合、国債を大量に保有している投資家は大量供給による価格の下落を恐れ、売りを誘発し、ドルへの信認が低下するのではないかと考えられます。


「綱渡り」という表現は、まさに現在のアメリカ経済をたとえるのにぴったりの表現だと感じます。

今週、米国では総額1820億ドルの国債入札が行われます。


日程は以下の通りです。


3月9日(月)・・・610億ドル(3か月・6か月物TB)
3月10日(火)・・・340億ドル(4週間TB)
          240億ドル(52週間物TB)
          340億ドル(3年物)
3月11日(水)・・・180億ドル(10年物)
3月12日(木)・・・110億ドル(30年物)


発行残高は6兆ドル。それに対し年内発行額が2兆5000億ドルと巨額に上る予定であることから、様々な懸念が出ています。以下何点かニュースを整理しておきたいと思います。


(1)投資家が選好する銘柄


国債は利回りと価格が逆に動きます。利回りが下がれば価格上昇。上がれば価格が下落します。ここでは長期債(10年物、30年物)と短期債(2年物、3年物)を比較し、投資家がどの銘柄を選好しているのか見ていきたいと思います。


ニュースで伝えられているところによると


長期債利回り(↑) - 短期債利回り(↓)


その差が拡大(スティープ化)しているようです。つまり価格で見れば長期債は下落し、短期債が上昇していて、投資家は保有期間が長くリスクの高い長期債を避けていると言えます。


2兆5000億ドルに上る巨額の発行が予定されている中で、短期債に発行が偏る場合、財政赤字の性質がより悪化することが考えられます。


短期債に偏りすぎた調達で1997年にアジア新興国で経済危機が発生したことは記憶に新しいことと思います。



(2)クラウディングアウト



クラウディングアウトとは、政府による財政支出が民間の投資を抑制してしまう現象をいいます。これには2つの主要な意見があります。1つは、民間の投資を抑制してしまうという意味で財政政策は全く意味がないという意見、2つ目は失業と有休資産が存在している場合は財政支出は有効だという意見です。


もし巨額の国債発行に投資家が嫌気した場合、国債の価格は下落、つまり利回りが上昇します。長期債は様々な金利の指標となるもので、代表的なものとしては住宅金利などは深刻な影響を受けるでしょう。住宅金利の上昇は、不動産の深刻な低迷にあえぐ米国では避けなければならない事態です。


これを避けるには金融政策がその悪い影響を抑制しなければなりません。FRBは近く米国債の購入を始める公算という予想も伝えられています。この場合は、国債価格が上昇し利回りが下落します。


また、先進国の国債増発により発展途上国の国債発行と競合することによってこれらの国々の財政に影響を与える可能性があります。

 

(3)株価と国債相場


先進各国の国債増発による供給の増加という要因だけでみれば、国債の価格は下落し、利回りは上昇するでしょう。しかし、米国の株式市場が大きく下落しているため、安全逃避を理由にリスクの低い米国債に流入しています。

 

これに対し著名投資家ウォーレン・バフェットは、利回りが低い点と将来のインフレ懸念から警告を発しています。


 

(4)インフレと国債


国債は償還額が決められているものが大半なので、株式に比べインフレの発生に弱い投資対象です。

通貨の暴落→ハイパーインフレという予想をよく耳にします。では、ドルの価値を決める大きな要因は一体なんでしょうか?


いろいろあると思いますが、米国債というものに注目する必要があると思います。米国債の保有者は主に連邦準備制度及び政府が約50%、外国政府・国際機関が25%程度、民間は22%となっています。

 

つまり、国債を外国政府に買ってもらうにはアメリカ政府と外国政府との力関係が主であり、市場が決めると単純には言えないものとなっています。ドルが基軸通貨となり、それを守ってきたアメリカの様々な力が最もよくあらわれ、その力を測ることができるのが米国債だと言えます。