クラウゼヴィッツやトゥキュディデスの本などを読みながら国際ニュースを読み解きます。

2009年1月アーカイブ

『原油価格の行方 - 中東情勢』シリーズ → | (5) | (4) | (3) | (2) | (1) |


米国は上下院ともイスラエルを支持する決議案を採択し、ブッシュ大統領もイスラエル支持を表明していました。それにもかかわらず、ハマスへ即時停戦を求め、イスラエルの完全撤退にも言及した国連決議案に米国が拒否権を行使せず棄権に留まったことにイスラエルは衝撃を受けていると伝えられています。ここからイスラエル当局はオバマ次期米国大統領が就任する1月20日までに事態にめどをつけるためにあせっているというニュースもありました。


また、反米を掲げる南米のベネズエラは米国に対抗しガザにエジプトを経由して支援物資を送るなど、中東あるいはその周辺に留まらない広範な影響を世界に与えるようになってきました。


では、まずはイスラエルとガザ周辺から最近の出来事をまとめていきたいと思います。


現在、エジプトの調停案が注目されています。ニュース等で注目されているポイントは3つです。


①ハマスによるロケット発射を防ぐ

ガザ・シティを中心としてイスラエル南部はこのロケットに悩まされてきました。ハマスは主に旧ソ連製の愛称「カチューシャ」と呼ばれるロケット弾を使用しています。これを抑え込むことが選挙が近いイスラエルの現政権にとって至上命題となっています。


それを踏まえハマスを軍事的に無効化(=ハマスの打倒)することを目標としていると言われています。逆に、それに失敗した場合はハマスの実効支配が国際的に認知されることとなり昨年夏に発生したレバノン・ヒズボラとの紛争と同様の結果になります。


②カザ地区の境界線の管理強化

エイパック(AIPAC)の記事によれば、エジプト-ガザ間11kmの間に武器搬送ルートが300ほど存在しているようです。この境界をエジプト治安部隊が管理し、ウェストバンクを管理しているアッバス議長率いるファタハの治安部隊がガザを管理するというものです。


③ハマスの法的地位

②に関連して、現在イスラエルのガザ侵攻を非難する声が世界的に高まっています。抗議デモが発生しているのはニュースによって伝えられているだけでも、米国、エジプト、アルジェリア、ヨルダン、スペイン、フィリピン、ドイツ、日本など多くの国で行われているようです。ハマスは、これら世界的な動きから、また選挙を経たものであることからガザを実効支配する正統性を主張しています。


当初イスラエルはPLOとの紛争との関連でハマスを支援していました。ハマスという組織にはさまざまな部門がありますが、もともと住民の教育・医療・福祉などに携わってきた経緯もあり住民の間では支持する声が高いと言われています。③の法的地位まで変えることができるかは微妙な情勢です。


では、前回中東について書いた4つの「見方」を最近の動きと関連合わせてもう少し詳しく見ていきたいと思います。以下、イランとイスラエルとの関係をアフガニスタンに注目して書いていきます。


見方1:地理的にイスラエルとアメリカを中心としたアフガニスタン駐留軍に挟撃される。→イランが不利。

見方2:アフガニスタンに駐留することになる膨大な兵力の補給線がイランと補給線近くに勢力があるタリバン勢力により圧迫されアフガニスタン駐留軍が非常に危険な状態に陥る。また、アフガニスタンを取り囲むような位置にある上海協力機構諸国が陰に駐留軍の活動を妨害する可能性がある。→イラン有利。


<上海協力機構と米国>
●2005年に上海協力機構が出した共同宣言では米軍の中央アジアからの撤退要求が出され、ウズベキスタンからは撤退することになりました。しかし、莫大な基地使用料を得ることができるためキルギスの米軍基地は存続しています。12月末時点では、カザフスタン・ウズベキスタンとの間で再び米軍基地設置の話が持ち上がってきています。





見方3:パキスタン経由の危険な補給線だけでなく、ロシア経由でアフガニスタンへの補給をする必要が生じ、対立してきた米国はロシアとの関係改善が必要になる。→イランが有利。

<代替補給路の確立>
1.アゼルバイジャン、トルクメニスタン、ウズベキスタン経由の補給路を検討(米軍、NATO)
2.アフガニスタンの約7割はタリバンに実効支配されているとも言われていて、たびたびアフガニスタン駐留軍の補給路を脅かしています。


<米国-ロシア関係>
●米国-グルジアの関係強化・・・グルジアのNATO加盟推進、グルジア軍の装備向上・訓練協力。安全保障・経済・民主化・人的交流がポイント→旧ソ連の領域なのでロシアの反発を招く可能性が高い。


<ロシア-EU関係>
1.ロシアからEUへの、ウクライナ経由の天然ガス供給停止・・・EUはノルウェー・オランダに供給要請、石油発電への代替を検討→原油価格を見る上で重要なポイントとなります。
2.天然ガスの国内への供給という観点では、ブルガリア・スロバキア・セルビア・マケドニアで深刻、ギリシア・オーストリア・チェコではこれから深刻な事態になる→NATOの東方拡大を嫌うロシアはヨーロッパを分断しようとしているとみることができます。






見方4:状況が不利になったイスラエルはアフガニスタンのイラン側を支援するため単独でイラン空爆。

<イラン空爆へのステップ>
1.アメリカからイスラエルへ地中貫通爆弾「バンカーバスター」の供与
2.イラン核施設まで飛行するための給油支援
3.米軍が管理するイラク上空の飛行許可


以前、イスラエルは米国にこれら3つの要請をしましたが、ブッシュ大統領はそれを拒否したという経緯があります。引き続きオバマ次期政権においても3つの要求がイラン-イスラエル間の関係を見るときのポイントとなりそうです。